最高裁判所第二小法廷 昭和22(れ)81 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人梶村謙吉提出の上告趣意書は「原審判決は被告人の犯行に付いて原審相被
告Aと共謀の上犯行当日午後九時頃犯行場所でAから受取つた丹前羽織を矢庭に被
害者の頭部に押し被せて其の場に右肩を下にし横に倒して被告人が被害者の足を押
へてゐる間にAは被害者の上半身に馬乗りとなり云々と詳細なる記述をしてゐるけ
れども原審判決に引用した各被告人の公判の供述だけでは右の判決に符合すること
が出来ない。大体原審法廷までは被告人各自はその犯行を肯認してゐるようではあ
るが次の諸点で符合しないし符合しない点を肯認出来る証拠がなく結局虚無の証拠
で事実を認定した違反がある即ち(1)共謀の点に付いては各自公判で犯行の相談
をしたことはないと云つて居るので若し之に反して共謀の事実を他の情況から認め
るには相当な理由をつけなければ唯単に同旨の自白といふだけでは足らない。(2)
犯行の時刻の午後九時頃の点は原審公判に被告人等の供述がない。又(3)右判決
記載の被害者の左肩を下にし云々の点は公判の供述がない(4)被害者の足を押へ
て居る間にAは被害者の上半身に馬乗りとなりといふ右判決の記載は被告人の原審
公判の供述である「Aが小母さん(被害者)を押へ付け小毋さんは足をバタバタさ
せてゐた」といふのと彼是喰違つてゐるものと云はなければならない。
以上各点に付いて原審判決は証拠なくして事実を認定した違法があり之は判決に
影響を及ぼすものであるから原審判決は破毀を免れないものと思ふ」と云ふに在る。
そこで記録について所論の諸点を精査して観ると
論旨中
(一)共謀の点に付いては、原判決挙示の証拠中被告人ならびに原審相被告人Aの
原審公判廷における此の点に関する各供述に依つて優にこれを証明するに足りるか
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ら此の点の論旨は理由なく、次に
(二)犯行の時刻の点に付いては、原判示に係る被告人等の各供述によれば、本件
犯行は少くとも判示年月日の午後七時頃から午後十二時頃迄の間に行はれたもので
あることが確認せられ、原審は之を諸般の情況を綜合の上犯行の時刻を右時間の範
囲内である午後九時過頃と認定したものと解するのが相当であるから論旨は結局原
審の事実認定に関する専権を攻撃するに帰着する許りでなく、もともと犯罪の日時
は罪となるべき事実そのものではないから、本件強盗殺人の犯行そのものの認定及
びその採証に違法も不当もない本件に在つては、犯行の時刻を逐一証拠によつて認
めた理由を示さないからとて所論のような不法があるものとは云へない。次で
(三)「左肩を下にし云々」の点は、単に本件犯行の状況を示す事実たるに過ぎな
いから之亦必ずしも証拠の挙示を要しないものと云ふべく、又
(四)被害者の「足を押へて居る間云々」の論旨は、本件犯行の一部を構成する事
実に関する証拠の瑕疵を攻撃するものには相違はないが、右の事実も亦本件犯行の
主要構成事実には属しない。凡そ犯罪の実行行為の具体的記述にあつては巨細に亘
り之を記載するを妨げないが、さればと云つてその記載事実の詳細に亘り逐一証拠
によつて認めた理由を明示するの必要はなく、要は犯罪構成事実の主要部分が認定
記述せられ、之に対する採証が明示せられてゐれば、それで必要にして十分な判決
理由となるものと解するのが相当である。従つて本論旨も亦理由がない。
以上の理由に因り、刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の如く判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見によるものである。被告人の上告趣意書は
法定期間経過後の提出であるからこれにしては判断しない。
検察官宮下秀雄関与
昭和二十二年十一月十九日
最高裁判所第二小法廷
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裁判長裁判官 塚 崎 直 義
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 栗 山 茂
裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 藤 田 八 郎
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